Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:公演レポート《仙台クラシックフェスティバル2015》


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 公演レポート◉                                 
仙台クラシックフェスティバル2015
2015年10月2日(金)〜10月4日(日)公演

〜仙台に根付いた秋の風物詩、  
10周年を迎えた音楽祭は子ども向け公演も充実〜 
                                          
 もはや秋の風物詩としてすっかり定着した仙台クラシックフェスティバル、通称「せんくら」。会期中の3日間は、市内のあちこちにクラシック音楽が溢れます。10周年の節目となった今年は、3日間で延べ約37,400人を動員。チケットは86公演中51公演が完売と、大盛況のうちに終了しました。
 「クラシックって、ちょっと敷居が高いかも……?」そんなイメージを「せんくら」は見事に覆しています。クラシック音楽のイベントとしてこれほど広く支持を得ている理由はどこにあるのでしょうか。今回の取材では、「子ども向け」と冠した公演に注目し、その秘密を探ります。


■「せんくら」とは?
 初めて「せんくら」を訪れた方は、パンフレットを見て思わず眼を疑うことになるでしょう。
 クラシックの“超”有名アーティストをはじめ宮城県内外を問わずさまざまな音楽家、グループが並び、プログラムも名曲揃い。朝から晩まで、3日間で86もの公演が市内の4ヶ所10会場で行われます。チケットは、なんと10002000円という破格の値段で、公演時間も45分または60分に統一。コンサートの「はしご」も出来るように、各会場の公演時間帯がなるべく被らないように工夫されています。さらに、全体のうち約7割のコンサートが、対象年齢の下限を “3歳”に設定しており(!)、“0歳”としている公演も7つ設けています。
 気楽にクラシックを楽しみたい方から、「はしご」をして堪能し尽くしたい方まで。ひとりで音楽に浸りたい方から、家族で楽しみたい方まで。パンフレットを見ただけでも、「あらゆる人のニーズに応えたい」、そして「とにかく気軽にクラシック音楽を聴いて欲しい」、という思いがビシビシと伝わってきます。


■こども向けコンサートに注目
 今回取材させていただいた公演は、音楽祭初日(102日)に行われた、仙台チェンバーアンサンブルによる「0歳からのコンサート」(公演番号14)と、宮城教育大学リコーダーすによる「小学生のための−放課後の音楽室−リコーダーのホントのステキなところ」(公演番号16)の2公演です。


■赤ちゃんもいっしょに、室内楽の響きを堪能
 「0歳からのコンサート」は親子連れで満席。「0歳から」と銘打たれているとおり、まだ生まれたばかりの赤ちゃんもたくさんいらっしゃいました。仙台チェンバーアンサンブルの編成は、ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・フルート・クラリネット・打楽器・ソプラノ。
「まだ小さいのにちゃんと楽しめるだろうか?」そんな不安も、一曲目が終わると同時に消えてしまいました。プログラム運びは「見事!」としか言いようがありません。45分間、全員が演奏に夢中でした。印象深かった3つの工夫を紹介させて頂きます。

その①「一曲の時間は長すぎず。曲間には必ずトークが挟まれる」
 45分で9曲。一曲あたり23分で、曲の前後には演奏される楽器の名前や、曲の聴きどころを面白おかしく説明してくれるので、こどもたちも集中して聴くことが出来ます。
「会場で配布されたプログラムより」

その②「こどもを巻き込んで演奏」
 2曲目が終わったあと、演奏者から衝撃の一言。
「歌っても、踊っても、走ってもいいよ!」
その言葉で、ちょっと緊張気味だったこどもも皆一斉に立ち上がり、思い思いに音楽を楽しむように。「一緒にリズム!コーナー」では、曲に合わせて手拍子。「トントンパッ!」「トンパットンパッ!」。すこし難しいリズムになっても、皆さん完璧にクリアしていました。
 曲のワンフレーズを聴かせて、「これはどんな動物の鳴き声かな?」というクイズもあれば、「どんぐりころころ」を全員で歌うコーナーも。「演奏者のそばで聴いてみよう!」のコーナーでは、こどもたちは我先にと席から立ち上がり、それぞれの場所で楽器を間近で体感しました。

「楽器を間近で体感する子どもたち」

その③「大人も楽しめるプログラム」
 「大人は子どもの付添い」。子ども向けコンサートにはこんなイメージを抱きがちですが、このプログラムは決して子どもだけを対象にしているわけではありません。クラシックの生演奏をゆっくり聴いて、リラックスされた方も多いのではないでしょうか。また、すべての曲がどこかで聴いたことのある名曲で揃えられているので、「たまに耳にすることがあるけど、曲の名前は今回初めて知った」といったようにクラシックの勉強にもなります。最後はソプラノ独唱による「きっと幸せ(お母さんたちへ)」、子育てで忙しいお母さん方を元気づける曲で締められました。
  

■学校で習うリコーダーが魅力的に響く!
 もうひとつの公演は、「宮城教育大学リコーダーず」による「小学生のための−放課後の音楽室−リコーダーのホントのステキなところ」。パンフレットには「ぜひリコーダーをご持参ください!」とあります。

「ステージ上には、『リコーダーの歴史』が展示されている」

 会場はリコーダーを持った小学生たちでいっぱい。公演の一曲目は「ピタゴラスイッチのテーマ」。テレビで聴くメロディーの生演奏に、みんな大興奮。バスリコーダーや、ソプラニーノリコーダーといった、今まで見たことのない楽器にも興味シンシンです。
 こちらの公演にも、さまざまな工夫が随所に散りばめられています。曲紹介はもちろんのこと、リコーダーの解説コーナーや、途中から現れた「リコーダー博士」による世界の笛紹介コーナー(なんと角笛も登場)、さらにリコーダーの裏技テクニック伝授コーナーまでありました。
「会場で配布されたプログラムより」
「リコーダー博士による演奏テクニックの伝授も」

 メインはやはり、小学生全員によるリコーダーアンサンブル。リコーダー博士が出す指示を皆さん完璧にこなします。会場をふたつのチームにわけて、メロディーの追いかけっこにも挑戦。それぞれが忠実に自分のパートに集中して、会場を美しいハーモニーで彩りました。
 公演全体を通して印象に残ったことは、宮城教育大学リコーダーずの皆さんがこどもたちのやる気をとても上手に引き出していたところ。演奏者としてステージにとどまることなく、積極的に客席に向かい小学生とコミュニケーションを取っていました。
 公演終了後は、演奏で実際に使われた楽器の体験会が開催されましたが、来場した小学生のほぼ全員が残って、それぞれが気になったリコーダーを体験しました。

「リコーダー体験に並ぶ子どもたち」


■来場者の方の声を聞きました
Q:子ども向けコンサート」で印象に残った点はありますか?
A:「子どもが楽しめるリズムの曲が多かったし、一曲あたりの時間も短かったのでとても楽しんでいた」
「小さな子どもがたくさんいらっしゃったので、気兼ねせず楽しめた。演奏者のリードもとても良かった」
「こういう公演がもっとあればいいなと思う」


本当に「0歳」のお子様も会場にはいらっしゃいましたが、楽しくリズムを取って楽しんでいたようです。ママ友を誘い合って来られた方もたくさんいらっしゃいました。赤ちゃんもママもみんな笑顔で会場を後にする姿が印象的でした。




主催:仙台市、公益財団法人仙台市市民文化財団、公益財団法人仙台フィルハーモニー管弦楽団、公益財団法人音楽の力による復興センター・東北、株式会社河北新報社、株式会社宮城テレビ放送、仙台市交通局
制作協力:公益財団法人ジェスク音楽文化振興会、株式会社HAL PLANNING





Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:主催者インタビュー《仙台クラシックフェスティバル2015》


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 ◉主催者インタビュー                              
仙台クラシックフェスティバル2015
2015年10月2日(金)〜10月4日(日)公演

お話いただいた方:
公益財団法人 仙台市市民文化事業団 コンクール推進課
音楽振興係長 丹野裕子様(写真:左)
音楽振興係 松本俊幸様(写真:右)
                                                                         インタビュー日:2015年10月2日(金)
■とにかく気楽に楽しんで頂けるイベントに■
 ——「せんくら」では、0歳もしくは3歳から入場可能な公演を数多く設けていますが、そのねらいは何ですか?
 開催当初から一貫しているコンセプトは、「クラシック音楽を気楽に楽しんで頂きたい」ということ。特に家族連れにとっては、クラシック音楽のコンサートに足を運ぶのはかなりハードルが高いことのように思われます。対象年齢の下限の低さ、一公演あたりの料金は1000〜2000円、公演時間も45分か60分に統一、といったような「せんくら」ならでは取組みは、家族連れでも楽しめるクラシック音楽のイベントでありたいという強い思いがあるからこそ実現しているものだと思います。





 ——小さな子どもがたくさん来場するからこそ必要な気遣いなどはありますか?
 子ども向けの公演会場には、子どもたちへの対応についてさまざまなノウハウをお持ちの子育て支援団体「特定非営利活動法人 MIYAGI子どもネットワーク」のスタッフに協力をお願いさせて頂きました。
 また、「たまには一人でゆっくりクラシックを楽しみたいけど、まだ小さい子どもがいるから……」といった親御さんのために、全会場に託児所を設置しています。



■大人気の「子ども向け」公演■
——「子ども向け」と冠した公演はどれも大盛況でした。広報するにあたって工夫したことはありますか?
 「せんくら」は公演数が多く、子ども向けコンサートの情報が埋もれてしまう恐れがあるので、子ども向け公演をピックアップしたチラシを別途作成して、近隣の学校へ配布させてもらっていました。過去には小児科に広告を貼らせて頂いたこともあります。また、子育て情報誌による公演情報や託児案内の掲載や、口コミも大きな効果があったように思います。


——広報開始のタイミングなどはいつ頃ですか?
 チケット発売開始の1ヶ月前にパンフレットの配布を始めます。市の施設や、会場沿線の地下鉄駅にも配置し、遠方のお客様向けとしてホームページでパンフレット送付の受け付けも行いました。
 ただ、お子様の体調を心配して、親御さんは2、3ヶ月先のチケットは前もって買いづらいというのが少し懸念しているところです。



 ——子ども向けコンサートを開催することにハードルはありましたか?
 かつては「0歳から」と冠したコンサートには、内部で反対意見が出たこともあります。通常のコンサートのように演奏を楽しみたい方もいらっしゃるなか、小さなお子様はどうしても動いたり、泣いてしまったりしますので。しかし、それでも続けてみた結果、「こういうコンサートもあっていいじゃないか」という理解が、運営側にもお客様の間にも広がって行きました。リピーターのお客様も多くいらっしゃいます。
 また、アーティストの方には、出演交渉の段階で「子ども向け」であるという公演コンセプトをしっかりと共有させて頂いています。その上で、演出やプログラムなどはアーティストの方にお任せしています。




■驚きのチケット価格。
運営するにあたっての工夫は!?■
——チケットは破格の値段なのに、これだけ充実したプログラムを実現できるのは何故なのでしょうか?
 出演者をはじめ、関係者の皆様のご協力はもちろんですが、事務局職員も企画立案するだけでなく、荷物の運搬や装飾物の製作など、出来ることは極力自分たちで行い、制作費を抑えています。しかし、何より運営する上で欠かせないのが、ボランティアの方々の協力です。会場スタッフの多くはボランティアにお願いしています。会場の装花、場内アナウンス、公式カメラマンも、みんなボランティアの方々によるものです。


——ボランティアの協力体制が成功している様子は、会場の和やかな雰囲気からも伝わりました。
 「せんくら」開催当初は、試行錯誤しながらボランティアによる運営の仕組みを作っていました。いまでは、ボランティアの方々の中には、イベントを支えることに対するやりがいや、来場者からのねぎらいの言葉をモチベーションにして協力して下さっている方も多く、もはやボランティア・スタッフなくして「せんくら」は成立しえないと言っても過言ではありません。



——お忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございました。



■さいごに■
今年で10周年を迎え、公演の内容や規模もますます充実してきた「せんくら」ですが、それも出演者、職員やボランティアの方の地道な努力や工夫があってこそ。特に子ども向けコンサートへの取り組み方は参考になるところが多いのではないでしょうか。こうしたイベントが全国のいたる所で開催されるようになれば、今回「子ども向けコンサート」に参加した子どもたちが大人になる頃には、クラシック音楽をもっと近くに感じられる社会になっているかもしれません。








Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:主催者インタビュー《東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」》


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 ◉主催者インタビュー                              
東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」
20157月4日(土)公演

お話いただいた方:
サントリーホール 企画制作部 プログラミング・ディレクター 安孫子実奈様 (写真:左)
東京交響楽団 支援開拓本部 本部長 梶川純子様 (写真:右)
                                                                         インタビュー日:2015年8月12日(水)


●こども定期演奏会のはじまり●
――長い歴史を持つコンサートという印象を受けましたが、どのようにはじまったのですか?
安孫子:サントリーホールでは1986年開館当初から次世代を担うこどものためのコンサートを開催してきました。一方東京交響楽団は1978年から「少年少女のための夏休み・春休みコンサート」を始めてオーケストラの聴衆層を拡大してきました。東京交響楽団の当時の専務理事・楽団長の金山茂人氏と事務局の中塚博則氏が「こどもを対象とした新しいタイプのコンサート」を考え、サントリーホールに提案されました。そのコンセプトに、サントリーホールはすぐに賛同し2001年のプレ公演を経て、2002年から開始しました。
開始から12年間は指揮者の大友直人さんが年間を通して指揮とMCを務めていました。子どもたちが定期的にホールに来て演奏会に親しめるようにと、プログラムの構成などはもちろん、「国」や「時代」など、音楽に関連することも知ってほしいという願いから、毎年テーマを決めて開催してきました。「定期的」ということで春夏秋冬1度ずつお越し頂けるよう、年4回としました。現在は大人向けの定期演奏会と同じように、指揮者を毎回変えています。一方統一感も大事にしたいので、アナウンサーの方にMCをお願いしています。



ーー後援に東京都小学校音楽教育研究会と港区教育委員会がついていますね。
安孫子:東京都小学校音楽教育研究会には、以前にファミリー向けコンサートの学校での配布などでご協力頂いたことがあり、2011年度から、港区教育委員会は、サントリーホールの地元、港区の小学生に聴いてほしいという願いから後援を申請し初年度から、応援して頂いております。



●主催者として工夫していること● 
――来場の子どもたちはコンサート中静かに集中して聴いているという印象を受けたのですが、主催者としてコンサート中に気をつけていることはありますか?
安孫子:奏者の思いや音楽の魅力等の話を挟み、子どもたちの聴くモチベーションを高めています。子どもは先入観がないので、知らない曲でも受け入れることが出来るようです。

梶川:子ども向けだからといって選曲を分かりやすい名曲だけにするといったことは特にしていません。「こども定期演奏会」の開始当初から大友直人さんが大切にされていた「子どもを子ども扱いしない」という精神が今も生きています。ただし1曲は長くても15分以内に収まるようにしています。


――大人向けのコンサートと違う点で苦労すること、また工夫していることはどのようなことですか?
梶川:対象年齢を過ぎた子どもたちはこのコンサートを卒業してしまうので、常に新しいお客様に来て頂かなければならないので、そこは苦労するところです。しかし、こども定期は東京交響楽団とサントリーホールの共催であるという点が大きな特徴です。ホールのお客様と、楽団のファンの方々との両方にアピール出来ます。また口コミで来てくださるお客様が圧倒的に多いので、Facebookでの広告を出したりしています。


●参加型の企画について●
――こどもレセプショニスト、チラシの絵、テーマ曲の募集といった参加型の企画も特徴的ですが、募集はどのように行っているのですか?
梶川:年度初回の4月の公演でプログラムに応募用紙を挟み込み、楽器体験、こどもレセプショニスト、懇親会、こども奏者の中から第1候補、第2候補を選んで応募してもらっています。

安孫子:チラシの絵は前年度に募集をしており、4月の公演で応募作品を全て展示します。テーマ曲は応募作品の中から選ばれた曲をプロの方に編曲してもらって4月から一年間、毎回のコンサートの一曲目に演奏されます。各企画への応募には、応募動機も書いてもらっています。


――演奏に参加する子どももいますね。
梶川:「こども奏者」は、毎年12月の最終回に、10分ぐらいの曲に参加してもらいます。夏休みの早い時期にオーディションを行います。合格したら、楽団員のレッスンが1回あって、オーケストラの練習が2回あって本番を迎えるので、参加できる子のレベルは高いです。
参加型企画の年間スケジュールの流れ



●こども定期演奏会の魅力とは●
――昨今ではさまざまな「子ども向け」のクラシック音楽のコンサートがありますが、「こども定期演奏会」の特色はどんなところに持たせていますか?
梶川:子ども向けのコンサートは多種多様ですが、「こども定期」はクラシック音楽を聴く姿勢をきちんと育ててあげたいと考えています。ホールという特別な空間で、じっくりと耳を傾ける体験をしてもらいたいです。定期的にホールにやってくる子どもたちを、私たちも「小さい大人」として迎えることで、音楽を楽しむ豊かな聴衆を育てていきたいと思っています。


――最後に、「こども定期」のやりがいはどこにありますか?
安孫子:「こども奏者」出身者の中には、この演奏会での経験がきっかけとなってプロになった方々もいます。「こども定期」からホールに愛着を持ち、大きくなってからレセプショニストのアルバイトとして戻ってきてくれる方もいます。一緒にコンサートを作る仲間として成長してくれたことにやりがいを感じます。

梶川:「こども定期」に足を運んでくれた子どもたちの中から、さまざまな人材が育つと信じています。引っ込み思案の子どもが「こども奏者」のオーディションを受けて積極的になった、などのお話が親御さんから届くことがあり、やりがいを感じますね。そのお子さんにとって特別な機会になったのかなと思うと嬉しいです。クラシック音楽とは聴く人の人生を豊かにするものだと思います。多くの子どもたちにホールでクラシック音楽の生演奏を聴く機会を提供し続けたいと思っています。





Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:公演レポート《東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」》


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 公演レポート◉                                 
東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」
20157月4日(土)公演

〜本格的なコンサート体験を子どもたちに伝える、
参加型企画も充実した「定期演奏会」〜
                                          
■「定期演奏会」の概要
  「こども定期演奏会」は21世紀の子どもの情操を養うため、年に4回定期的にコンサートホールでオーケストラの生演奏を聴くことができるようにと始められたコンサートです。2002年に東京交響楽団がサントリーホールに提案したのがはじまりで、現在はバークレイズ証券株式会社がスポンサーとなり、東京交響楽団とサントリーホールとの共催となっています。バークレイズは300年以上も歴史を持つ金融グループであり、芸術活動を応援することで文化の発展とコミュニティーの成長を支援しています。チケットは全席指定で、1回券は3000円、年間会員券は4公演で10000円です。
 
 コンサートには毎回参加型の企画も盛り込まれており、7月は「こどもレセプショニスト」でしたが、「楽器ワンダーランド」、「こども奏者」による東京交響楽団との共演、指揮者との懇親会というように、参加型企画の内容は毎回変わります。参加者は年間会員券の購入者から募集されます。またチラシの絵や毎年のテーマ曲も子どもたちから募集をしています。

 2015年度のテーマは〈オーケストラ・タイムマシーン〉。バロック時代からはじまり、ロマン派、近現代の音楽と、全4回のコンサートで歴史を追ってオーケストラ作品を鑑賞できるようになっています。2013年度までは東京交響楽団の名誉客演指揮者である大友直人氏を中心としたコンサートでしたが、現在は毎回替わる4人の指揮者とアナウンサーのMCによってコンサートが進められ、お話を加えながらクラシック音楽を身近に感じられるように工夫がなされています。

今回取材した「第54回こども定期演奏会」は、指揮は垣内悠希氏、ソリストが金子三勇士氏、オーケストラは東京交響楽団による演奏、テレビ朝日アナウンサーの坪井直樹氏の司会で行われました。





■第54回定期演奏会の様子をレポート!
  この日の参加型企画は「こどもレセプショニスト」でした。9名のレセプショニストが制服を着て開場の際にお出迎えをし、開場10分前のプレトークで注意事項のアナウンスを一人1文ずつ舞台上から行いました。そのプレトークでは、レセプショニスト(ご案内係)という仕事についての説明もありました。こどもレセプショニストたちは講習を受けてから本番に挑んだようです。
第54回定期演奏会では、こどもの参加型企画として、『こどもレセプショニスト』を実施。
サントリーホールのレセプショニストの制服に身を包んだこどもたちが、会場のご挨拶、入場のお手伝いを体験した

 
 いよいよ本番が始まります。まず「こども定期演奏会2015」のテーマ曲から始まりました。これは子どもたちの応募作品の中から選ばれた作品をプロの作曲家によってオーケストレーションされたものです。その後、MCの坪井さんが登場し、コンサートの説明に加え、ロマン派に関する説明をします。ロマン派のキーワードである「疾風怒濤」という言葉や時代背景などについても言及していました。子どもたちは知らない言葉が出てきても、理解しようと親御さんと一緒にプログラム・ノートを覗きながらお話を聞いていました。続いて、オペラ《魔弾の射手》序曲が演奏され、指揮者へのインタビューに移ります。垣内氏が指揮者を目指すきっかけになった、カルロス・クライバー指揮、《ばらの騎士》のコンサートでの「音楽って素晴らしい!」という感動体験を話しました。次はソリストの金子氏を迎えて、ピアノ協奏曲第1番変ホ長調から第234楽章の演奏です。演奏後、金子氏は子どもたちに向けたメッセージを語りました。6歳でハンガリーに独りで留学した話に親御さんは驚き、子どもたちも真剣に聞いていました。ここで一旦コンサートは15分の休憩に入ります。

後半は、序曲《フィンガルの洞窟》の演奏から始まりました。休憩を終えた子どもたちは、飽きることなく演奏に集中し、中には指をさしながら親御さんに質問をする子どももいました。プログラム最後の曲、交響曲第7番ロ短調「未完成」の第1楽章の説明では、司会の坪井さんから、なぜ「未完成」なのかという3択クイズが出されました。子どもたちは元気よく手をあげながらクイズに参加していました。「未完成」の演奏が終わると坪井さんから挨拶があり、アンコールに軍隊行進曲の演奏でコンサートが終わりました




■「こども定期演奏会」の特徴
こども定期演奏会は音楽だけでなくコンサートのシステムそのものにも焦点を当てているのが大きな特徴です。コンサートは1年以上前から企画を始め、参加型企画を決定しています。スポンサーの存在やチケット価格の設定、あるいは楽譜を管理する人や奏者のスケジュールを管理する人など、他にもたくさんの人が働いて、ようやく成り立つコンサートのシステムを子ども達に理解してもらえるように、プログラムに解説を載せるなどの工夫もしています。

「文化庁平成26年度戦略的芸術文化創造推進事業」において東京交響楽団のコンサート来場者および定期会員向けアンケートが201496日に行われました。その調査結果によると「こども定期」の来場理由は、オーケストラの生演奏を子どもに聴かせたいという理由が圧倒的に多く、過半数を超えています。毎年来ているからという理由が20%、子どもが楽しめるようにという理由が10%ほどあります。また1回券と年間会員券と2種類ありますが、同様の調査結果によると一回券は口コミで広まったものが圧倒的に多く、年間会員券は何年間か継続して購入されているようです。


■まとめとして
 「こども定期演奏会」は、子どもを「小さい大人」としてコンサートホールに定期的に迎え入れ、集中して音楽を楽しむ姿勢を養うコンサートです。音楽の生まれた国や時代背景などにも着眼させ、クラシック音楽の持つアカデミックな要素をわかりやすく説明しながら、音楽が楽しくなるような聴き方を子どもたちに示しています。参加型企画も充実しており、音楽に関係した特別な体験を通じて、子どもたちの成長を後押ししています。



主催:公益財団法人 東京交響楽団、サントリーホール
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)
特別協賛:バークレイズ証券株式会社
後援:港区教育委員会、東京都小学校音楽教育研究会







宝くじドリーム館(大阪)ランチタイム・コンサート vol.6

2015年10月22日(木)12時より、宝くじドリーム館(大阪)にて、ランチタイムコンサート(プレミアムクラシック)vol.6が行われました。(本会企画制作事業)

タイトル「ビバ・マリンバ! わくわくコンサート♪」
出演:大熊 理津子(マリンバ)、藤岡 弘子(ピアノ)

写真右から:大熊理津子さん(マリンバ)、藤岡弘子さん(ピアノ)

宝くじドリーム館(東京)ランチタイム・コンサート vol.6

2015年10月21日(水)12時より、宝くじドリーム館(東京)にて、ランチタイムコンサート(プレミアムクラシック)vol.6が行われました。(本会企画制作事業)

タイトル「聴いて大当たり! ~J&Mゴールデンデュオがお届けする ヴァイオリンの「歌」~」
出演:大森 潤子(ヴァイオリン)、白石 光隆(ピアノ)

写真左から:大森潤子さん(ヴァイオリン)、白石光隆さん(ピアノ)

Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:企画制作者インタビュー《Concert for KIDS〜0才からのクラシック》


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 ◉企画制作者インタビュー                            
Concert for KIDS0才からのクラシック
201595日(土) 

お話いただいた方:Sony Music Foundation企画事業部チーフ 高堀明日香様
                                                                         インタビュー日:2015年9月5日(土)
毎年全国各地で行われている“Concert for KIDS~0才からのクラシック~について、Sony Music Foundationの企画事業部チーフ、高堀明日香さんにお話しを聞くことができました。高堀さんがこのコンサートの企画をするようになってから8年、企画に込められた思いや工夫について伺いました。


■お客様の声から生まれたコンサート■
―――0才から入場できるコンサートというのは数少ないように思います。0才から入場できるようにした理由は何ですか。
 Sony Music Foundationでは、1985年より「0才から」のクラシックではなく、「0才まえ」のコンサートとして、妊娠中のお母さんたちを対象にしたコンサートを行っていました。そちらのお客様から、「妊娠中にはコンサートを聴けたのに、子どもを産んでからはそういう機会がなくなってしまった」というお声をたくさんいただいたことをきっかけに、1999年から今回のように0才から入場できるコンサートを企画しました。当時は0才から入場できるコンサートはなかったので、お客様に無料で来ていただいて、その代わりに「アンケート」に答えていただいていました。お客様のお声を聞きながら、コンサートの開演時間や全体の時間などを設定しました。
今でもアンケートは続けていて、毎回楽器を変えたり曲を変えたりしているので、それらについてのフィードバックを得て次の演奏会へと活かしています。アンケートは出してくださったら、その場でステッカーを差し上げているので喜ばれているようです。



―――アーティストの方たちも、アンケートの結果をご覧になっているそうですね。  
 そうですね。「見たい」とおっしゃるアーティストが多いです。客席の反応は演奏中に感じられるそうですが、実際に「あの曲が良かった」ですとか、「あの時の動き方が可笑しかった」など、お客様が具体的にいろいろなことを書いてくださるので参考にされています。その上でアーティストの方も「次はこうしようかな」とか、「この曲とこの曲は一緒にしない方が良かったかな」と意見を出してくださいます。そこから私たち企画制作者との相互作用を働かせ、ブラッシュアップしています。



■いろいろな楽器の音を子どもたちに届けたい■
―――出演を依頼するアーティストはどのように決めていますか。
子どもたちが聴きにきているコンサートだということを、深く理解してくださるアーティストに出演していただいています。そうしたアーティストさんは決して多くはありません。アーティスト同士のつながりで紹介していただくこともありますが、文化や芸術によって豊かな地域づくりに貢献されている『一般財団法人 地域創造』へ登録されているアーティストに多く依頼しています。この財団に登録するためにはオーディション等があり、演奏技術も保障されていますし、財団の考え方に基づきこのようなコンサートに対して理解のある方が多いです。 



―――ユニークな楽器編成ですが、どのようにして決めていますか。
 子どもたちにさまざまな音色を聴いてもらいたいという想いから、いろいろな楽器編成を組んでいます。アーティストさんも「新しい楽器を入れるべき」と考えてくれています。ピアニストと歌手は、どの公演にも出演してもらい、歌手には進行役もお願いしています。それ以外の楽器については、ホールや、公演回数によって考慮しています。初めてのホールであれば、誰もが知っているようなヴァイオリンやフルートといった楽器を入れたり、リクエストにお応えしたりしています。場所によっては、アーティストさんとホールがつながっていて「この人に来てほしいからConcert for KIDSをやってください」とお願いされることもあり、それで編成が決まることもあります。なかのZEROでは、何年もやらせていただいているので、毎回新しい楽器にしたいと考えています。ホールがとても広いので、今回は見た目がワイルドなマリンバや音が通りやすいトランペットを入れました。
 このように、公演ごとに楽器編成が変わってくるので、演奏曲は楽器編成に合わせて、名曲をアレンジしています。なるべく原曲に近い形で、子どもたちが大きくなってから聴いたときに違和感を感じないよう、アーティストと相談しながらアレンジを行っています。



■全国で年間約20公演、小さな公民館でも■
―――Concert for KIDSは、全国各地で行われていそうですね。
 毎年全国で約20公演行っています。ほとんどの都道府県で行っています。大都市や大ホールが主催する子ども向けコンサートはいろいろありますので、私たちは小さな町の公民館など、クラシックのコンサートをあまりやっていないような場に行って公演していることが多いです。舞台と照明、音響装置があればどこでも大丈夫です。公演日は土、日、祝日をメインにしておりますが、土日休みでない方もいらっしゃるので東京では水曜日の公演もあります。この公演は0~2才の子どもたちが多く、毎年完売しています。
 社会貢献や良いものを提供したいと思っている自治体やホールが主催してくださるため、こちらから公演の営業をしたり、ホールとホールの間の口コミで「良いよ」と言ってくださって企画が実現したりするなど、公演が決定する方法はさまざまです。企画の特性上、入場料はそんなに高い金額を設定できないため、主催者の方にとっては赤字になることが多いという側面も多少あるようですが、私たちも主催者の方たちも、お互いに「良いものを作りましょう」という気持ちで開催しています。たとえばホールが主催の場合は、子どもの頃からホールに足を運ぶことで、「小さい時に来た!」という気持ちで将来のお客さんにつなげていきたいといった想いもあるのではないでしょうか。やはり生ですばらしい音楽を聴くことは、心に響き、心に残ると思います。 
また、全国的に見ればまだ公演をしたことがない都道府県がいくつかあるので、今後も積極的に公演を行いたいと思っています。 
⇒Concert for KIDS公演情報のページはこちらをクリック★


■「敷居が高い」というイメージを取り除きたい■
―――Sony Music Foundationさんがこの公演を行う最大の目的とは何ですか。
 クラシック音楽に対して「敷居が高い」というイメージを取り除きたいですね。クラシック音楽が難しくない、とは言いませんが、「難しいから行けないわ」「どんな格好していいかわからない」という気持ちをなくして、とりあえず来てみて楽しんでいただきたいです。音楽はクラシックだけが全てではないので、ポップスや、吹奏楽やJAZZなどと並び、1つのジャンルとして、クラシック音楽に触れていただきたいです。全国でコンサートを聴いてくださり、クラシック音楽ファンのお子さんが増えたら良いなと思います。