Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:公演レポート《夏休み みなとみらい わくわく遊音地》


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 公演レポート◉                                 
「夏休み みなとみらい わくわく遊音地」
 2015年8月13日(木)〜8月17日(月)公演

~鑑賞から楽器製作&ステージ演奏まで、
聴く・見る・作る体感型プログラムが満載
                                          
「夏休み みなとみらい わくわく遊音地」とは
「遊園地」ならぬ「遊音地」として、夏休みに横浜みなとみらいホールで子どもたちに音楽を存分に楽しんでもらいたい――そんなコンセプトの基に企画された、0歳から参加可能な家族で音楽を楽しむためのイベントです。期間中は、国内トップクラスの演奏家による室内楽コンサートやオルガンコンサート、親子のためのオペラ教室に加え、市内のジュニアコーラスによる演奏、実際に楽器を作って演奏を行う「工作室」まであり、非常に盛りだくさんなプログラムになっています。

 今回は81317日の5日間の会期中のうち、2日目の814日に取材をさせていただきましたが、その中でも「オルガンコンサート」と「工作室」の様子をお伝えします。

2015年は8月13〜17日の開催。メインとなるのは14、15、16日の3日間


親子でオルガンの魅力を味わう「こどもオルガン・1ドルコンサート」
ホールオルガニストの三浦はつみ氏による、3歳から入場可能なオルガンコンサートです。親子で本格的なオルガン演奏が聴けるだけあって、すでに11時半の開場前から親子連れの長蛇の列が見られました。「オルガン1ドルコンサート」は、ホールの年間を通してのイベントで、今年の共通テーマは、「バッハに魅せられた人々」でした。今回のコンサートもこのテーマに沿い、モーツァルト、バッハ、ベートーヴェン、シューマンのオルガン作品が、随所に取り入れた分かりやすい解説と共に演奏されました。

 演奏されたオルガンには、「ルーシー」という愛称がついており、はるばるアメリカから船でやってきたということです。三浦さんは、このオルガンにはパイプが全部で4623本あると説明したり、パイプの中で最も低い音、高い音を実際に弾いて聴かせたり、音色の幅を広げる「アクセサリー」という機能の紹介をしました。そして最初の曲、モーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》より〈アレグロ〉が軽快に始まりました。同時に、初の試みとして奏者の手元と足元の様子が、ステージ上に設置された大型スクリーンに映し出され、普段なかなか見ることができない奏者の手足の動きに、小さな子供たちも興味津々だったようです。

バッハの作品からは、有名な《メヌエット》で子どもの心をつかむと同時に、オルガンの魅力を存分に味わえる《トッカータとフーガ》ニ短調BWV565も演奏され、その重厚な響きに会場の誰しもが心を奪われている様子でした。圧巻だったのは最後のシューマン《バッハの名による6つのフーガ》より第1番。この作品についても、三浦さんは子どもたちに分かりやすく、バッハの名前の文字、「BACH」をドイツ音名に読み替えた「シ♭−シ」のテーマを基に作られていることを説明。最後を飾るのにふさわしい大作でしたが、子どもたちは非常に真剣な顔つきで耳を傾けている様子でした。単なる「子どもむけ」に終始しないプログラムにより、親子ともにオルガンの魅力を目で見て、耳で聴くことで存分に味わえる贅沢なコンサートでした。



身近な材料で楽器作り――
ハマのJACKのメンバーによる「おんがく工作室」
頑張って作った楽器を使って音を鳴らす喜びを、子どもたちに知ってもらいたい――そんな思いから生まれたのが、「おんがく工作室」です。12年生は「振る楽器」をテーマにマラカスや太鼓、34年生は「吹く楽器」としてクラリネット、56年生は「弾く楽器」のヴァイオリンをそれぞれ製作しました。太鼓はバケツを利用したり、マラカスの中にはビーズを入れたりと、身近な材料が上手く生かされていました。
パンフレットより、1年生から6年生までが作る楽器の紹介写真


作るものによって部屋が分かれており、それぞれの制限時間のなかで作業が進められていました。楽器作り、音の出し方を指導したのは、横浜を拠点に「クラシック音楽をできるだけ身近に感じてもらいたい」と活動するプロの音楽家集団である「ハマのJACK」のメンバーです。

子どもたちが苦戦していたのが「音を出す」作業のようです。とくに56年生が作ったヴァイオリンは、松脂の塗り方、調弦の仕方、そして構え方等、かなり本格的なことをハマのJACKの講師から習いながら試行錯誤していました。それだけに音を初めて出すことができたときの子どもの笑顔と、「音が出た!」という歓喜の声は印象的でした。1年生は小さいながらも針に糸を通すなど、非常に細かい作業をもくもくとこなし、作る大変さと同時に自分だけの楽器を作る楽しさを味わったようです。

最後に皆で大ホールのステージに集合し、ハマのJACKのメンバーと会場の手拍子と共に、「ラデツキー行進曲」を演奏しました。子どもたちだけではなく親御さんにとっても、苦労して作った楽器で演奏できた喜びはひとしおだったのではないでしょうか。演奏を「聴く」こととはまた違った音楽の楽しさを知ることができる、アイディアに溢れた企画でした。




会場の雰囲気
参加した親御さんからは、「このイベントを通して、子どもを本物の音楽に触れさせたかった」という声が複数聞かれ、親子で音楽の魅力を満喫しようと来られている方が多い印象を受けました。また「子どもの頃に行った中村紘子さんのコンサートが印象に残っており、そのような思い出を娘にも残してあげたい」など、親御さん自身が子どもの頃にコンサートに行った経験が今回のイベントに来るきっかけになったという声もありました。クラシック音楽を身近に感じている親御さんが多かったようです。単に演奏を聴くだけではなく、子どもたち自らが「参加」することで音楽をより身近に感じられるような工夫が随所にみられる遊び心満載の企画に、親子ともに自然と笑顔があふれる会場の雰囲気が印象的でした。




主催:横浜みなとみらいホール(公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団)
企画協力:特定非営利活動法人 ハマのJACK
支援:平成27年度 文化庁 劇場・音楽堂等活性化事業

 

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