Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:主催者インタビュー《夏休み みなとみらい わくわく遊音地》


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 ◉主催者インタビュー                              
「夏休みみなとみらいわくわく遊音地」
    2015年8月13日(木)〜8月17日(月)公演

  お話いただいた方:
  公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団 事業企画グループ チームリーダー・コーディネーター 菊地健一様
                                                                         インタビュー日:2015年8月14日(金)


――「遊音地」は数年前から行われている企画のようですが、始まった経緯を教えてください。
そもそも2011年に「遊音地」が始まる前までは、オルガンのみに特化した、「夏休みオルガンわくわく大作戦」という企画をやっていました。しかし、当ホールにとってオルガン以外の事業も重要なのではないか、という話になったのです。そんな時に、子ども向けワークショップやレクチャー付き演奏会など、子どもから大人まで、多くの方へのクラシック音楽普及活動をされている、NPO法人の「ハマのJACK」さんを知りました。そのコンセプトや活動内容に共感し、当ホールと協働で企画を実施することになったのです。それにより楽器を子どもたちの手で作って演奏する「工作室」や、室内楽コンサートなど、幅広いラインナップの音楽体験を提供できるようになりました。昨年までは1週間ほどの期間をかけて行っていたのですが、今の子どもたちのライフスタイルを考慮して、今年から中心となるイベントは3日間の開催となりました。


――参加した親御さんはどういった目的でいらしているとお考えですか。 
情操教育と、あとは夏休みの自由研究ですね。それと「横浜」という街自体のイベント性も非常に高いので、ほかの催しと一緒に参加しようとやってくる方もいらっしゃいます。いずれにせよ、良い音楽体験というのは、たとえすぐに何か目に見える効果として表れなくても、大人になってからふとした瞬間に思い出すこともあると思います。ですので、とにかく聴いてみる機会をつくることが大事だと思います。


――「遊音地」の宣伝はどのように行ったのですか。
市内の全小学校には教育委員会を通じてチラシの配布をお願いしました。それと当ホールがある周辺の区のみですが、市内の幼稚園にも配りましたね。全部で大体20万部という膨大な数になります。


――そのうち実際の来場者数はどのくらいなのでしょうか。
今年から実質3日の開催になったので詳しいことはまだよく分からないのですが、大体6000人から7000人くらいでしょうか。オルガンコンサートだけで1700人ほどいらしています。


――本当に沢山のお客様がいらっしゃっているのですね。ではそのオルガンコンサートについて、詳しくお話を聞かせてください。
今年は「バッハに魅せられた人々」をテーマにした「オルガン1ドルコンサート」の一環で、この「遊音地」にも組み込みました。昨年までの「遊音地」では、小学生500円、中学生以上1000円で「パイプオルガンと金管アンサンブルコンサート」を開催していました。ですがそれだとオルガン自体の魅力が薄れてしまうのではないか、ということで今年からオルガンのみのコンサートにしました。「オルガン1ドルコンサート」自体はお昼の公演を年8回と、夜の公演を年3回、計11回行っていますが、「子ども向け」として開催したのは今回が初です。オルガンは奏者が客席に背を向けて演奏する楽器なので、どのように演奏しているかわかりにくいところがあります。ですので、今回は大きなスクリーンに演奏者の手元と足元を写すという工夫をしました。


――つぎに、「工作室」についてお話を伺いたいと思います。主催者さんにとってこのイベントは準備も当日も相当大変だと思いますが。
当日ももちろん大変なのですが、材料の事前準備が特に大変です。材料の調達は6月ごろからはじめ、美術系の財団に協力を仰ぎながらやっています。


――参加したい子どもが多く、応募倍率も高いと伺ったのですが。
毎年倍率は8倍から10倍で、大変でも続けている理由のひとつがこの人気です。夏休みの自由研究を目的として来る方も多くいらっしゃいます。ただこれにはまだまだ改良の余地があります。例えば学年ごとに作る楽器が違うので、ヴァイオリンを作りたいと思ったら5、6年生の2年間のうちに、この高倍率のなか抽選を当てなくてはならない。かなり過酷な状況ですよね。もっと万人に参加してもらうように改良してもいいと思います。


――では最後に「わくわく遊音地」の今後の展望を教えてください。
ここ数年ラインナップが固まってきているので、何か新しいことをやりたいとは思っているのですが、まだ具体的には決まっていません。ただ先ほどの工作室の話をすると、必ずしも高学年が難しい楽器を作らなくてもいいと思います。たとえ低学年の子どもたちと同じ楽器を作ったとしても、高学年の子どもたちはそれを使ってより高度な演奏をすることにしてもいいのかもしれません。ようするに「楽器を作ること」と「楽器を演奏すること」それぞれにどのくらい重点を置くべきかが難しいところだと思います。そういったところは、これから考えていきたいです。なお、横浜みなとみらいホールでは、「遊音地」の他、ソリストオーディション「金の卵を探しています」の実施など、未来の音楽家を応援する企画も行っています。



――本日は貴重なお話を頂きありがとうございました。